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2001年7月30日
 今回「屋根の上の新聞読み」に「夜の校舎」と共に追加した「大慌ての報道」は明石花火事件の報道についてだが。
「将棋倒しで10人死亡」という見出しに「県警によると、死者のうち7人は2〜71歳で、うち6人が9歳以下だったという」と記事が続く。
 最初この記事をネットで見てなんだこの文章はと思った。
 2歳から71歳といえばたいていの人間はその中に入っている、これではほとんど何も言っていないのと同じである。うち6人が9歳以下、ならば最初から「6人は2〜9歳、1人は71歳」と言えばよいではないか。さらに言えば、10人のうち7人が2〜71歳ということは残りの3人は1歳以下か72歳以上?
 このとき既に私はNHKのニュースでこの事件の報道を見ていたので、そうではないことは知っていた。おそらく見出しは最新の情報だが、県警の発表の時点で把握できていたのは7人なのだろう。
 まあネットでの速報だからなと思っていたら、翌朝の新聞にもそのまま同じ文章が載っていた。しかも一面トップに。そこに載るまでには編集部や校正のチェックが入っているはずなのに。
 私は単なる「文章が下手くそ」以上の問題を感じていた。
 かつてTVがメディアの中で大きな力をつけ影響力で新聞を追い抜いたとき、「速報性はTV、詳報と分析は新聞」という住み分けがもっともらしく言われていた。しかし、ネットでのニュースサイトをどこの新聞社でも始めるようになり、新聞は速報性を持ってしまった。
 とはいえ新聞とTVには大きな違いがある。ウェブはあくまで書き言葉なのだ。
 話し言葉には揺らぎがある。話す人の表情やしゃべり方、場の雰囲気など言葉以外の情報が加わっている。相手がそのまま言葉を受け取るわけではなく、無意識のうちに補完している。
 書き言葉は違う。それが紙であれウェブであれ、言葉以外の何もない。ゆがんだ言葉はそのままゆがんだ情報になる。
 速報性という意味では、NHKは定時番組を中止して被害者の氏名が判明するまで同じ原稿をひたすら読み続けた。詳報と分析にかけては、事件が起こったのが土曜日だったためTBS・テレビ朝日は月曜日のレギュラーのニュースでかなり詳しく分析していた。
 速報性を手に入れた新聞は代わりに何かを失っている。

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