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 なんだもっと大男かと思ったらそうでもないなと思いつつ喜三郎は話しかけた。
「えーと、いろいろ頼みはあるのだが、まあとりあえず腹が減った。ラーメンを持ってきてくれ」
「できません」
「え?」
「ぼく、アラジンですから」
 だってと言おうとして喜三郎は気がついた。そうか。アラジンが出てきてどうするんだ。いろいろ命令を聞くのは、ランプの魔人なんだ。アラジンはこする側だ。
「じゃ、何ができるんだ」
「ぼく、日本語ができるんです」
「いや……それもすごいことだとは思う、確かに。それ以外には」
「ランプをこすることができます」
「あれは大変だぞ。俺は二時間近くもかかったぞ」
「こつがあるんです」
 アラジンはランプを取り上げてこすり始めた。するとさっき喜三郎がこすったときにはなかなか大きくならなかった煙が見る見るうちに大きくなって中からアラジンが飛び出した。
 アラジン2が喜三郎に「おはようございます。アラジンです」
 アラジン1がアラジン2に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン2がアラジン1に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 喜三郎が二人のアラジンに「あ、こら、ランプをこするなっ!」
 二人のアラジンがランプを両側からこすると二筋の白い煙があがり、中から二人のアラジンが飛び出した。
 アラジン3が喜三郎に「おはようございます。アラジンです」
 アラジン4が喜三郎に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン1がアラジン3に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン2がアラジン4に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン3がアラジン1に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン4がアラジン2に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン1がアラジン4に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン2がアラジン3に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン3がアラジン2に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン4がアラジン1に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン3がアラジン4に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 アラジン4がアラジン3に「おはようございます。ぼくもアラジンです」
 喜三郎が四人のアラジンに「だから、ランプをこするなっつーの!」
 四人のアラジンがランプをこすると四筋の白い煙があがり、中から四人のアラジンが飛び出した。
 八人のアラジンが互いに挨拶をかわすなか、喜三郎はつぶやいた。
「アラビアンナイトには、もっと、淫靡な世界であって欲しい」

     [完]




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