PAGE 1/2
大型結婚式小説
キャンドルオプション
佐野祭

「お色直しの際のご入場は、キャンドルサービスになります」
 ここは、結婚式場黒姫山。式場係の杉野森主任の差し示すカタログを食い入るように見つめる喜三郎と手児奈であった。
「3種類のキャンドルをご用意しておりまして、どのタイプでもお客様のお好みに合わせてお選びいただけます。こちらのAタイプが通常の蝋燭ですね」
 杉野森主任はカタログを指さした。
「Sタイプになりますと、蝋燭の色が7色に変化いたします。そしてSSタイプですと」杉野森はカタログをめくった。「この写真のとおりですね、点火と共にそれぞれの蝋燭から花火があがるようになっております」
「わーっかわいいーっ」手児奈が声を上げた。
「ねえ、喜三郎、どれにする」
「うーん、手児奈はどれがいい」
「7色もいいんだけど、やっぱこの花火もすてきだし、でもお値段が倍近く違うんだよね」
「そうだよなあ……あの、どのタイプが一番多いんですか?」
「それはもうお客様のお好みによってそれぞれなのですが、Sタイプをお選びになるお客様が多いようです」
「そうか、じゃあ、Sタイプにしよう」
「うん」
「ありがとうございます。当式場ではオプションとして、『悪のりして騒ぐ悪友セット』をご用意しておりますが、こちらの方はいかがでしょうか」
「……は?」
「キャンドルサービスを盛り上げるには最近どちらの結婚式を拝見しましても欠かせないようですね」
「あの、それは、どんなことをするんでしょ」
「まずこちらのBタイプですと、蝋燭の芯を濡らしてなかなか火がつかないので喜ぶことになっています」
「……それはよくあるよね」
「当式場ではお客様の個性に合わせて様々なタイプをご用意しております。Aタイプになりますと、蝋燭の芯をハサミで切ってしまいます」
「それじゃ火が着きにくいでしょう」
「なかなか着きませんので、何度も音楽をかけ直したりしてそれはもう大変です」
「はあ。このSタイプというのは何ですか」

#.次頁
0.Vol.2に戻る