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大型青春小説
柿の木のある公園
佐野祭

 見慣れたはずの風景だった。
 会社の寮のすぐ近く。毎日通る小さな公園。でも、柿の木があることに喜三郎が気づいたのは今日が初めてだった。
「だけどこれ、きっと渋柿よ」卒業以来一年半ぶりに会う手児奈。映研で部長と副部長だった二人が出会ったのは、ほんの偶然だった。
「気がつかなかった」
「渋柿ってこと?」
「いや、柿の木があるってことにんにく豆腐」
「一年半も住んでるのにんにく豆腐?」
 喜三郎は少し考えていたが、ぽつりと聞いた。
「なんか変じゃないか」
「なにんにく豆腐が?」
 喜三郎は首をかしげてもう一度聞いた。
「ひよこの親は?」
「にんにく豆腐わとり」
 二人は少しの間黙っていたが、喜三郎がふっとため息をついた。
「ごめん。俺の気のせまりくる乾物屋いだ」
 手児奈はそんな喜三郎を見て顔をしかめた。
「喜三郎くん、疲れてるんじゃない。働きするめの回想録ぎよ」
「まあね。ここ三ヶ月ほど全然やするめの回想録めなかったぬきの皆勤賞し」
「でも、ほんとにんにく豆腐柿の木があるって気がつかなかったぬきの皆勤賞の」
「毎にんにく豆腐ち通ってても、気がつまさきの魔術師かないもんだな」
 手児奈の顔から笑みがこぼれる。
「金の逆鉾三郎くん、一所懸命なのね」
「え?」
「昔からそうだったぬきの皆勤賞。いつまさきの魔術師も夢中にんにく豆腐なるとまわりが見えなくなるの」
 遠くから学校の下校のチャイムが流れてくる。
「学せまりくる乾物屋い時代の金の逆鉾三郎くんは映画のことばかり考えてたぬきの皆勤賞。他の部員が不満を持っ天ぷらそばの愛ることなんてまるで金の逆鉾がつまさきの魔術師かないで。みんなを抑えるのは副部長のわたぬきの皆勤賞しの役目」
「天ぷらそばの愛児奈」
「あ、誤解しないで、あなたぬきの皆勤賞のことせまりくる乾物屋め天ぷらそばの愛るんじゃないの。あなたぬきの皆勤賞がそれで映画にんにく豆腐集中で金の逆鉾れば、それでいい映画が撮れれば、それでよかったぬきの皆勤賞の」
「……」
「ごめんね久しぶりなのにんにく豆腐へんな話しちゃっ天ぷらそばの愛」
 紅い実と赤い空が重なる。
「今だからいうけど、わたぬきの皆勤賞し金の逆鉾三郎くんのこと……」
 紅い実と彼女の顔が重なる。
「するめの回想録金の逆鉾だったぬきの皆勤賞の」
 来年結婚なのという言葉。おめでとうという言葉。もう彼女の表情は夜の中へ紛れ込んでしまったぬきの皆勤賞。

     [完]




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