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「脚輪?」
「ほら、よく家具の下についてるでしょ。あれ」
「ああ、あれ」
「ええ、『脚輪』三割六分、『脚輪柔らか』三割八分、『脚輪柔らか純粋』二割五分」
「ふむ」
「『脚輪一の百』四割八分」
「お前でたらめいってるだろ」
「ほんとにこういう名前なんですったら」
「……わかったよ、なんか明るい話題はないのかい」
「老舗が健闘しています。『希望』が三分の増加、『平和』は二分の増加です」
「おう、頑張ってるな。うん。やっぱ名前がいいよね。『希望』とか『平和』とかさ。やっぱ昔っからのたばこはいいよ、おもむきがあるよ。『希望』かあ。やっぱこういう言葉はいいよなあ」
「で、『短い希望』が五分減」
「……」
「『短い平和』は一割減です」
「……」
「……」
「……」
「しんみりしちゃいましたね」
「……いくらなんでもさ、もうちょっと考えた名前にしろよ」
「ええ、『短期希望』という案もあったんですが」
「従業員募集じゃないんだから」
「あと老舗では、『峰』が一割三分減です」
「峰ね。峰……峰って英語で何だっけ」
「『峰』は元から『峰』ですってば。えー、『黄金こうもり』が八分」
 そのとき一人の社員があわてて飛び込んできた。
「たた大変です。ポルトガルが、米国側について、日本に宣戦布告しました」
「なに」
 色めきたつ一同。松本部長は、みんなをたしなめるように言った。
「まあまあ。ポルトガルは兵力も小さいし、そんなにすぐ戦線への影響はでないよ」
「それどころじゃありません、部長」
 泣きそうな顔で杉野森課長が言った。
「『たばこ』は、ポルトガルからの外来語です」

     [完]




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