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 写っていたのは手児奈に間違いなかった。
 ソファーに横たわる手児奈。手児奈はTシャツをめくり上げている。そしてそのおなかの上にはヤカンを乗せている。
「やだやだやだ違うの、ほら、へそが茶を沸かすっていうじやない、そりゃ、本当に沸くとは思ってないけど、」
「……変なねえちゃんだねえ」
「な、なによ人のプライベートの写真ばかり、」
「プライベートってのはアホなもんなんだね」
「ア、アホで悪うござんしたね」
「ふーん。焼き増ししてウチのチラシにはさんで配るってのも楽しいかもな」
「やめてやめて、やだやだやだ」
 喜三郎は手児奈に二箱の洗剤を渡した。
「新聞とってくれる気になったかい?」
 手児奈は涙を溜めていた。
「ネガ返してくれる?」
 喜三郎はうなづいた。
「ねえ」
 手児奈が顔を上げる。
「なんでこんなことまでして新聞とって欲しいの?」
 喜三郎は鼻の頭をかいた。
「つーかねー、こんなことまでして写真撮ったんだけど、これじゃせいぜい新聞とってもらうのが関の山なんよ」
 喜三郎は手児奈に二箱の洗剤を渡して言った。
「プライバシーってね、意外とつまらないもんよ」

     [完]




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