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 飛行場には、真新しいジェット機がとまっている。見たところ、普通のジェット機と変わりはない。吹き出し口のところに弁があるはずなのだが、下からみると分からない。
「では、始めます」
 喜三郎が手をあげると、ジェット機はうなりをあげて動き始めた。が、そのうなりはすぐに聞き憶えのあるメロディをかなで始めた。『踊るポンポコリン』だ。
「どうです」
 離陸して踊るポンポコリンを歌いながら飛んで行くジェット機を見送りながら、喜三郎は自信満々に弥三郎に話しかけた。
「なかなかのもんでしょう」
「ああ、思ったより鮮明な音色でびっくりした。なるほど、これならいけそうだな。ただ……」
「ただ?」
「軍用機が『踊るポンポコリン』じゃ困るな」
「そうですかねえ。親しみやすくて、よいんじゃないでしょうか」
「それはそうだが乗ってる方の志気にかかわる。やはりここは国歌にしよう」
「はあ。いやでも子供なんかにも受けますし……」
「国歌だ」
「……はい」
 さっそく空軍機はすべてこのタイプに改造され、空軍の各基地からは戦闘機や爆撃機が国歌を吹奏しながら離着陸を始めた。

 それから一年。
 三本松社の応接室では、喜三郎と弥三郎がうかぬ顔をしていた。
「……これで四勝十一敗か」
「十両転落ですね」
「……やはり『踊るポンポコリン』にするべきだったかな」
「いや」
 喜三郎はきっぱりと言った。
「やはり毎日聞きなれていて飽きの来ない曲にしましょう」
 喜三郎の提案は取り入れられた。空軍の各基地からは戦闘機や爆撃機がゴミ収集のテーマを吹奏しながら離着陸を始めた。

     [完]




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