PAGE 1/1
大型言文一致小説
手術室
佐野祭

 梅田手児奈が入院してから1ヶ月。
 外科局長の杉野森弥三郎は手術の必要性について悩んでいた。
「迷うことはないじゃないですか。今のうちにシジュツするべきですよ」
 こういうのは担当医の松本喜三郎である。
「でもな、シュジツしても患者の体力がもつかどうか」
「あの子はまだ若い。シジュツに耐えるだけの体力はありますよ」
「でもそうやってリスクをしょってシュジツしてもな、せいぜいもってあと一年だ」
「だってね、その一年があの子にとって大事な一年になるかもしれないんですよ。シズツは無駄にはならないですよ」
「それはシュジュチュがうまくいったときの話だろう」
「でもね、シジュッしなければ、間違いなくあの子は二ヶ月しかもたないんです。このまま待ってろというんですか、シジチすべきですよ」
「だがなあ、そうシュジッシジツというけれど、シュズツするのが必ずしも彼女にとって幸せとは限らないだろう。シュデュツに対する恐怖だって当然あるだろうし」
「じゃあこのままシリツせずに手をこまねいてろっていうんですか。スズツに対する恐怖っていうなら、シュジュチュしないことの恐怖ってのもあるでしょ」
「我々の体じゃないんだぞ。患者の体なんだ。シュズチュが患者のためになるとわかってればともかく、そうでなければ冒険は控えるべきだと言ってるんだ」
「スジツが冒険だなんてどんなときでも一緒でしょうが」
「……まあ、ここで言い合ってても始まらない。スジュツするのは彼女だ。彼女の意志を聞いてみよう」

 病室のベッドの脇。弥三郎は手児奈にことの次第を話した。
「……そんなところです。シュズッすればあと一年長らえますが、シュルツによる体力の消耗を考えますと私としては必ずしもお薦めできません。でも、あなた自身のことですからよく考えて結論を出して下さい」
「手児奈さん」喜三郎が身を乗り出した。「確かにシデュツは危険だし、一年は短いかもしれません。でも、あなたにやりたいことがあるのなら、一年という時間は決して短い時間ではないはずです。もちろん我々も万全を尽くします。勇気を持ってシディツに臨んで下さい」
 ベッドの上で手児奈の無表情な顔が喜三郎を見つめていた。やがてゆっくりと視線を窓の外に運ぶ。窓の外にはこの町の市役所、図書館、ホテル、デパート、そして家並……。
 手児奈はまたゆっくりと視線を戻し、口を開いた。
「わかりました。オペしてください」

     [完]




ぜひご意見ご感想をお寄せ下さい。(ここのボタンを押していただくだけでも結構です)
#.次の作品
0.Vol.1に戻る