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大型実話小説
タオルを湯に入れるな
佐野祭

 実話である。作者としては主人公の行動についていろいろ思うことはあるのだが、それはそれとして、なるべく客観的に事実だけを描写することにする。従って松本喜三郎はでてこない。ざまあみろ。
 私が家族と箱根に行ったときのことである。私は一人大浴場の男湯に入っていた。そこへどやどやと入ってきた一団がいる。修学旅行の中学生だ。やれやれうっとうしい連中が入ってきたなと、私は湯船を出て体を拭いた。
 脱衣所ではハンドマイクを持った教師が生徒に注意している。
「いいか、タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に入れるな。タオルを湯に入れるなー。タオルを、湯に、入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に入れるなっ。タオルを湯に入れるなー。タオルを湯に、入れるなよ。タオルを湯に入れるなー。タオルを、湯に、入れるな。タオルを湯に入れるなよー。いいか、タオルを湯に入れるな。タオルを、湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるんじゃない。タオルを湯に、入れるなよー。タオルを湯に入れるな。タオルを、湯に入れるなよー。みんな、タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるんじゃないぞ。タオルを、湯に、入れるな。いいか、タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に、入れるなあ。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるなよー。いいか、あとからきたやつ、タオルを湯に入れるなよ。タオルを湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に、入れるな。タオルを湯に入れるなよー」
「先生」
「ん?」
「湯の外ならいいの?」
「湯の外ならいいぞ。いいか、タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるんじゃない。タオルを湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に、入れるな。タ・オ・ル・を・湯・に・入れるなよー。タオルを湯に入れるんじゃない。中村、タオルを湯に入れるなよ。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に、入れるな。タオルを湯に入れるなよー。いいか、タオルを湯に入れるな。タオルを、湯に入れるんじゃない。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるなよ。タオルをー湯にー入れるなよー。タオルを湯に入れるな。タオルを湯に入れるんじゃない。タオルを湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。いいか、タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるな」
「先生、ロッカーわかんなくなっちゃった」
「だから番号憶えてろっていったろ。いいか、タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるな。タオルを湯に入・れ・る・な。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に、入れるなよ。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に、入れるなっ。タオルを湯に入れるなよー。いいかあ、タオルを湯に入れるんじゃないぞ。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるなよー。タオルを、湯に入れるなよー。タオルを湯にな、入れるな。タオルを湯に入れるなよー。タオルを湯に入れるなよー」
 この話がここで終わるのは、教師が注意をやめたからではなく、私が風呂場から出たからである。

     [完]




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