大型近未来小説「手」

第11回 子供には手がいる


 『千手観音くん』にはもちろん子供用もある。
「マモルくん、ご飯よ」
「はーい」
「よくかんで食べるのよ」
「うん」
「お父さんもご飯よ」
「お、今日はトンカツか」
「いただきます」
「いただきます」
「底辺かける高さ割る2」
「おい、マモル、なにも飯食いながら勉強することないじゃないか」
「いいじゃないの。そのために手がいっぱいあるんでしょ」
「そんなこといったって母さん、飯食うときぐらいは」
「でも今のような競争社会じゃ仕方ないわよ、ね」
「競争ったって百メートル競争じゃないんだぞ。小学生のうちから勉強ばっかりやらせるってのは」
「心配しなくても大丈夫。そんなこと私だってわかってるわよ。だから勉強ばっかりじゃなくて、もうひとつの手では、ちゃんと」
「ピコピコ」
「テレビゲームやってるじゃないの」

      (続く)

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