大型歌手小説
鉄橋の歌

♪あなたのいない夜は 独りでお酒を飲みながら
「だめだめ」
 松本喜三郎がピアノの鍵盤を十個いっしょに抑えた。
「テコナだめだよ、口先だけで歌っても。歌はね、心だよ」
 梅田手児奈は、静かにうなだれた。
 手児奈は一応歌手である。「一応」といったのは、まだデビューしていないのだ。幼い頃から歌手になるのが夢だった手児奈は、二年前上京して作曲家の喜三郎の元に弟子入りした。以来、修行を重ね、いくつかのレコード会社から話は来ているのだが、喜三郎はまだデビューにOKしない。「手児奈はまだ歌の心がわかってない」の一点張りなのである。

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