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十一代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見て「ああ、これ食えないかな」と思い、茎をかじってみようとしたが「ま、細かい話は略すが、穂を石でゴリゴリ剥いて食おうとしたがまずかった」という父の遺言を思いだし、きっと焼かずに食ったからに違いないと、焼いて食おうと思って火の中に放り込む。燃えてしまったのであきらめる。

十二代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見て「ああ、これ食えないかな」と思い、茎をかじってみようとしたが「ありゃ食えん」という父の遺言を思いだし、あきらめる。

十三代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見て「ああ、これ食えないかな」と思い、茎をかじってまずかったが「ありゃほんとに食えねえんだろうか」という父の遺言を思いだし、試しにもうちょっと食ってみるが、やっぱりまずかったのでやめる。

十四代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見て「ああ、これ食えないかな」と思い、茎をかじってまずかったが「わしの若い頃はどんなまずいもんもモリモリ食ったもんじゃ」という父の遺言を思いだし、試しにもうちょっと食ってみるが、やっぱりまずかったのでやめる。

十五代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見て「ああ、これ食えないかな」と思い、茎はみるからにまずそうだったのでやめ、穂を食おうと思ったがやっぱ皮は剥かなきゃ食えないだろうと考え、手で剥いていたら大変だなと思い石でゴリゴリこすり、生では食えないかなと思い焼くのは大変そうなので煮ようと思ったが「わしがうまいと思ったのはゴロゴロドリの蒸し焼きだな」という父の遺言を思いだし、そっちを食う事にする。

十六代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見て「ああ、これ食えないな」と思って通り過ぎる。

十七代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見ていきなり穂を石でゴリゴリこすり煮て食べる。

十八代目松本喜三郎
 腹が減ったのでイネを見て「ああ、これ食えないかな」と思ったのだが、父は何も遺言しなかったので、茎をかじり、まずかったのでやめる。

 かくして、人類が本格的に米を食うようになるのはまだだいぶ先の話になる。

     [完]




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