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「かごめ かごめ 篭の中の鳥は
いついつ出やる 夜明けの晩に
ツルとカメとクマとヒヒがすーべった
後ろの正面だーあれ」
私は息を飲んだ。
この歌の原点においては、ツルとカメだけでなく、クマも、さらにヒヒも登場していたのである。
私は興奮してたずねた。
「喜三郎さん、この村に他にこの歌に詳しい人はいますか」
「ん?そうだな、杉野森の弥三郎とっつぁんがいいんじゃねえか」
弥三郎とっつぁんの家は反対側の村はずれにあった。私は戸を叩き、現れた老人に訊ねた。
「私わらべ歌の研究家で。かごめかごめが歌われたそうですね。ちょっと歌ってみていただけますか」
弥三郎とっつぁんは変な顔をしながらも歌ってくれた。
「かごめ かごめ 篭の中の鳥は
いついつ出やる 夜明けの晩に
ツルとカメとクマとヒヒとトドがすーべった
後ろの正面だーあれ」
私は息を飲んだ。
もはやツルがどうしたカメがどうしたという話ではない。この歌に秘められている意味は私の想像以上に深かったのである。
私は興奮してたずねた。
「弥三郎さん、この村に他にこの歌に詳しい人はいますか」
「あ?そうだな、梅田の手児奈ばあさんが知ってるよ」
私は戸を叩き、現れた老人に訊ねた。
「研究家で。かごめかごめ。ちょっと歌ってみていただけますか」
手児奈ばあさんは変な顔をしながらも歌ってくれた。
「かごめ かごめ 篭の中の鳥は
いついつ出やる 夜明けの晩に
ツルとカメとクマとヒヒとトドとハブがすーべった……」
私は会社に連絡して、しばらく休むと伝えた。あれからこの村をほうぼうかけずりまわったが、まだかごめかごめの原点は分からない。まだ当分帰れそうにない。カタカナ二文字の動物名にけりがついて、やっとムジナが登場したばかりなんだから。
[完]
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